『うみねこのなく頃に Episode7 Requiem of golden witch』竜騎士07 : プレイメモ&考察

うみねこのなく頃に Episode7 Requiem of golden witch』のプレイメモと若干のテーマ考察です。後半は結構叫んでます。推理面やより客観性に富んだ読解は魔王14歳さまのこちら(事件の謎は解明されたか?-『うみねこのなく頃に Episode7 Requiem of golden witch』 - 魔王14歳の幸福な電波)に詳しいのでぜひどうぞ。なお、本エントリはネタバレ全開なので、EP7まで未プレイの方は回避推奨です。




・冒頭、二人の新登場人物であるウィルと理御が、掛け合いによって速攻、読者になじむ。楼座に話を聞き始めるころにはもう。

・ある種「解決編*1」であるEP7において、転換した認識や解釈に違和感を持たれては不味い。なので、「心情的に理解を示す」ウィルがその認識の転換(あるいは収束)の聞き手であることは、巧手のはず。

・10tの黄金。どうしても説明の付き難いことに関して、大状況をひっくり返すことで成立させてしまう辺りの豪腕は、『ひぐらし』と共通している。作家性だったのか!w

・真理亜の「1人で全てを生み出せる」は、『うみねこ』の物語全体の「送り手と受け手の二者の信頼関係」によりゲームは成り立つ(愛がなければ視えない)のアンチテーゼか。

ライトノベルやゲームの文章って独特のリアリズムで動いているよね(婉曲表現)、に対し、竜騎士07は『ひぐらし』においても(EX.沙都子の義父やレナの親族関係とか)、『うみねこ』の解決編においても、現実に寄った生々しさを利用したリアリティを持ち出してくる感が。『うみねこ』では、ヴェールを剥いだ真相はリアリティをこっちに持ってくるんだろうな、ということ自体は単体では容易に予想されていたことではありますが。

ベルンカステルが「無限の平行世界に拡散して体験の一回性や時間の不可逆性を喪失」している。無限にサイコロを振り直せることの罪は、その繰り返しの中で、「サイコロを振ることの意味」と「一回一回の出目の尊厳」を見失ってしまうこと。枷が輪郭を創る。境界線を失えば、「中身」も失われる。ゲーム盤のルールによる制約に馴染み、その背後にあってそれを要請する「動機」≒「心」≒「愛」を理解することが、「世界の唯一性」や「体験の一回性」、つまりは「生きた尊厳」を回復することに繋がる? 「カケラ」と蔑称して見下す「平行世界俯瞰」の視線を、「ゲーム盤」として捉え直すことで、「拡散」が「収束」する? それを取り戻すことが「愛がなければ視えない」?

・源氏期待の「親子の情を取り戻す」どころか、「ベアトに似てる使用人が!」って躊躇い無く金蔵のお手つきになったら源氏涙目だな……、とここまで考えて、ベルンと同じ悪趣味だと気づいた。頭痛がすらァ……。

・なんか『雫』みたいなBGMが……。礼拝堂にて。

犯人はヤス。いうまでもないことです。

・サボるの一節。「私は完璧に義務を果たしている」とやって、他人にまでそれを強制しては、基本的に押しつけがましい自己同一化でしかない。自分で自覚的にある種の悪(ここでは仕事中の節度を持った息抜き)を許すことで、他人のそれらも許せることになる。「交換可能な余裕*2」が生まれる。自分には義務と潔癖を強いるが他人にはいっさい要求しない、でも高潔にはなれるのだろうけれど、それでは負荷が掛かりすぎる。この辺りの「必要悪(or嘘)」の処理は、細かい描写だけれど、本作の「真実と嘘、事実と魔法」に対する「愛」の問題とリンクしている。竜騎士07の、あまり注目されない特徴として、こうしたミニマルが凄く巧い。

・しかしワルギリアやロノウェとの距離感が、こんなにガチでそのままだとは思わなかったし、実際そうであってもこんなに心情的に受け入れられる、納得できる、とは思っていなかったので、これもすごいなぁ。

・インディアン人形w そういえば『うみねこ』では頭に銃をぶっ放されたら明白な死亡判定になっていたけ(ry

・「何でも願いの叶う魔女」と「無限の平行世界を眺める魔女」は二つにしておおよその根が同じ。『ひぐらし』の無限の再試行による奇跡の裏側にして副作用でもある「拡散」について、「何でも願いの叶う魔女」へとパラフレーズして挑んでいる。

・紗音の動機について。6章「試される日」。「愛がなければ視えない」、なにも確実な保証のない域にあっても相手を「信じる」ことによって生じるもの、について語る物語にあって、その事件の動機がそうして「信じる」ことの大失敗から生じているというのは、シビアというか。シビアというか、メチャクチャ誠実。あと、前回に引き続いて蔵臼株が上昇しております。

・9章。しかしベアトリーチェがもはや直接「犯人を覆うヴェール」として表示されている。ここまで迫ったことといい、これにもう何の違和感も抱かないことといい、遠くまで来た感が。

・当初から、直接の血の繋がりが明示されている親族は全員肩すかしで、金蔵とその直属の家具であれば共犯なりなんなりで「背後」を囲い込める、とは割合至りやすい思考だけれど、このような形だとは。「”金蔵”称号説、金蔵継承説」は確かEP4で戦人が言ってはいましたが。

・「奇跡」を迎えることの無かった物語を、それでも受け入れるために。

・ほとんどの人が知らないままに終わるだろうけれど『羊の方船』とよく似ている。「語られた物語」の「聞き手」だけが属する「語られなかった、語られることのない物語」を祝福する「語られた物語」。

・理御が、すなわち「語られた物語」の外にある、前提を違えた者が、聞き取り、理解することが、「語られた物語」の外で起きる、「起きなかった奇跡」の物語となる。祝福となる。すなわち、「奇跡の起きなかった物語」を「語られ、聞かれ、理解されること」が、「物語の中では起こることの無かった」、「奇跡」となる。「物語ること」が、「祝福」。その尊厳を認め、守り、物語の中で奇跡を起こさなかったベルンカステルの「祝福」。*3

・「奇跡」を起こさずに、「奇跡」を迎えることの無かった物語を、どのようにして祝福し、肯定するか! メチャクチャど真ん中で「リトバスパラドックス(物語の二重化と乖離)」を迎えてしまったKEYないし麻枝への「物語」への信頼による超克じゃないか……!*4

・お茶会。戦人がすっごく嫌な奴に見えますッ。

・紗音こえええ……。「誓い」とか「約束」とか、重ねられてももう信じてないだろこれは。

・もしかして……、えー、あー……。

・なつきー! うわあ……、うわー。

・あー……。

・「魔女はなにもしていない」。ありとあらゆるお膳立てをし、舞台を整え謎掛けをしたが、「魔女はなにもしていない」。

・「真実」に救いが無い件について。「魔法」がご入り用ですか?

・うわあああああ! 絵羽こええええ!!!

・ろーざさんw なんという。

・あれ……? 絵羽?

・霧江ェ……。

・あー、やっぱ生きてたか。ここでズラす意味あんまり無いものなあ。しかし、これは面白い……。

・うーん。「奇跡」が物語内では封鎖されていることを提示するのはいいのだけれど、「語ること」によって、どこにたどり着こうとしているのかは、まだ分からないなあ。*5

「突然の不幸な事故で、みぃんな死んじまうのさ。その瞬間まで、俺たち親族は仲良くやってたのさ。……そうなるんだ。だからこいつは、気にするな。忘れろ。」
「純真だな。……殺せるんだぜ。カネで人は。」
「へ、……はっはははははははは。………案外、こんなもんなんだな。」
「もっと、良心が痛むと思ってたぜ。……終わってみりゃ、案外、こんなもんだ。」
「……馬鹿からカネを搾り取るのと、まったく同じことさ。……いつもの椅子取りゲームじゃねぇか。目の前にカネの山があったら、早い者勝ち。遅いヤツは蹴落とされて地獄行きってわけさ。」
「………ありがとよ、霧江。……いつもお前は俺の心の甘えを断ち切ってくれるよ。……へっへっへ、…へっはははっはっはっはっは! ひゃっはははははっはっはっはっはっはっはっはっはッ!!!」

・あぁ、このミもフタもなさなんだよなあ。
物語の真実(真相)を嘘(魔法)で覆ってしまうことの是非、は当然問われるのだけれど、そんな観念論に落とし込んだ質問の立て方自体がやや不足で。部外者がハラワタを引きずり出すこと、や、残された者が事件とどう向き合うか、という前提を含めた上での問いを立てるための残虐、というか、ミもフタもなさ。

・いやいやいや、絵羽対霧江は見たかったけど、よりによってそれを叶えるのかとw

・ここまで*6来ても霧江の眼のハイライトを消さないのは、素晴らしい演出だと言わざるを得ない。

・母と子の問題は繰り返されてるなあ。絵羽が譲治にしたように愛を注げばそれは蜘蛛の糸で巣から出さないように縛ることであり、かといって霧江はご覧の有様であり。ただ、譲治がそうしたように「巣立ち」をすればいいので、前者が吉との方針か。

・しかしこれは……戦人が棺に物語を捧げた姿を思い出してしまう。

「あの日、何があったかを、知ることよ。」
「あっははははははははは、あーっはっはっはははははははははははは!! 真実ってそんなにも尊いものなの? 馬鹿らしい、愚かしい!! どうしてニンゲンは真実を自在に出来ないのかしら。馬鹿みたいにそれだけを追い求め、そして目の当たりにして堪えられず、自ら屑肉と成り果てる!!」
「ねぇ、見えてる? クレル? ………あなたもまた、この真実を隠したかったのよね? あなたは戯れに、憧れる推理小説のラストのように、メッセージボトルに封じるつもりで、猫箱の物語をいくつも書いていた。それをあなたは、海に投じたわ。この真実を知ったら苦しむだろう者を救うためにね…!!」
「あなたが猫箱で閉ざし、絵羽がそれを錠前で閉じた。くすくすくす!! その箱を私が切り裂いてあげたわ…!! あっははははははははははッ、あんたが隠した全てが無駄ッ!! あんたが死んで隠した真実を、全て暴き出してやったわッ!!あっはははははははっはっはっはっはっはッ!!」

・うわ! 理御も封鎖された!?

・猫箱の範囲を広げて問題を解決したところで、「平行世界の魔女ベルンカステル式」の救済といえば確かにそうで、妥当……。

・うわぁ……、完全に「VS平行世界の想像力」じゃないか。

ベアトリーチェ。閉ざされた、逃げ得ぬ絶対の二日間に閉じ込められたあなたは、その二日間の猫箱の中で無限を生み出せる魔女となったわ。……絶対に救われない、報われないことと引き換えにね。しかしあなたは夢を見たわ。……それが右代宮理御という夢。………自分がクレルとならずに済み、幸せに暮らしていたかもしれない奇跡の世界を夢見て自らを慰めていた!」
「………理御を見つけるのは本当に苦労したわよ。その存在は、ベアトが夢見た通り、本当に奇跡だったんだから。そして、葬儀の最後に見せ付けてやりたかったのよ。………その奇跡をもってしても、あんたは惨劇を逃れられやしないってね!!」

・あー……、「家具」。

・ウィル! 真実が悪辣に暴かれることの無いように「守る探偵」という。事件の解決とその幕引きに対して、全体的に「責任を持ってる」わけか。

・屈服したら「運命」、信じたら「真実」。

「俺が教えてやるんだよ。バッドエンドしかないと絶望して死んだベアトリーチェに、ハッピーエンドもありえるんだって教えてやるんだ。だから絶対にお前を、下ろさねェ。」
「……………………ウィル……。」
「猫ども、左の二の腕もくれてやるぜ。欲しけりゃ両足もくれてやる。……だがな、絶対ェに理御だけは放さねェ。……俺が、這ってでもこいつを、お前というバッドエンドから逃がしてやる……!」
「いいの、理御? ウィルは、あんたを庇って死ぬ気よ? 嫌でしょう? 私なんか放って逃げて下さいって、お言いなさいよ。」
「……………ウィル……。」
「おう。」
「……私を、…………放さないで下さい……ッ。……逃げ延びます、絶対に! そして、あなたも…!!」
「それでいい。」
 その言葉に、ウィルは理御を力強く抱きかかえる。

 このゲームに、ハッピーエンドは与えない。

・戦人ァァァ!!! うわー、すげー! やべえ! なんだこれは。うわー*7

 シクシク。……シクシク、シクシク……。
 少女が一人、……無人の、静寂の礼拝堂で、泣いていた。
 それは小さな少女。……6歳の少女。
 1986年の10月4日に、5日に、……島にいられなかったことを、これから12年にもわたって嘆く、悲しみの少女……。
 そこへ、………一人の男がやって来る……。
 男は少女の姿を見つけ、……怖がらせないように、静かに歩み寄り、……そっと、その肩を抱いた……。
「………お兄ちゃん……………。」
「探したぞ、縁寿……。」
 少女は、兄の胸に飛び込み、再び泣いた…。
「どうした。……何をそんなに悲しんでいるんだ。」
「今日、クラスの子にいじめられたの……。テレビで、お母さんは悪い人たちと繋がりがあったって。………だから、うちのお父さんとお母さんが犯人で、みんなを殺したんだろうって……。……絵羽伯母さんに、そんなことないよねって聞いたのに、答えてくれないの……。……お父さんとお母さんは悪くなんかないよね? ね…?」
「可哀想に……。……みんなが、あの島で、あの日なにがあったのかを、好き勝手なことを言ってるんだな…。……そこにお座り。」
「……………うん…。」
 男が床を指差すと、そこに黄金の蝶たちが集まり、椅子を作る。
 少女は素直に、それに腰掛けた……。
「……お兄ちゃんは知っているよね? お父さんとお母さんは悪い人じゃないって、知ってるよね?」
「あぁ。もちろんだとも。……誰も悪い人なんかいないって、知ってるさ。」
「じゃあ、教えて。あの日、何があったの? 六軒島で何があったの?」
「いいとも。………話してあげるよ。あの日、あの島で何があったのか。」
「それは、……怖い話……?」
「まさか。」
「それは、悲しい話……?」
「とんでもない。」
「それは、……どんな話……?」
「聞いた縁寿が、自分で決めるといい。決して辛い話じゃないんだよ。だからお聞き。」
「うん。戦人お兄ちゃん……。」
「あの日、お兄ちゃんたちは六軒島に行ったんだよ。とても大勢でね。大事な親族会議があることになってたんだ。………まずは、どこから話したものかな。」
 これが。
 縁寿に捧げる、最後のゲーム。
 お聞き、縁寿。
 あの日、六軒島で、何があったのか。
 これは、辛い話でも、悲しい話でもないんだよ………。

・綺麗な嘘、優しい幻。
 ティーカップから飴玉を取り出す、たった一つの魔法。

うみねこのなく頃に

うみねこのなく頃に

*1:解答、ではテーマに反する感もありますし、回答では、伏せっぱなしで回答かどうか、という感もあり

*2:わたしはさっきサボった、だからあなたのミスを大目に見よう、というような非同一の交換可能性。

*3:思いっきり騙されているという。ただ、この「ベルンカステルが理御を連れてきたこと」自体の効用については、あながち的外れでもない。語り手と聞き手の二人からなる「宇宙」の力を利用する。最後に戦人が縁寿に「物語り」始めるような、一段上の「魔法」の方が本命のようだけれど。

*4:ほんとに「物語への信頼」を要してこそいますが。「苛酷」の物語があるのはいいとして、“なぜ、わざわざ、語られるのか?”とする観点に立てば、こんなに理想的な超克はないんじゃないかと、私見。物語内部に「あり得た可能性」として内在する「救済」ないし「奇跡」を許容しない、とする前提に立つ限り、これは卓抜な発展系なんじゃないかなあ、と。ぼくの好みが全開過ぎる気もしますが。

*5:悲惨な展開に圧倒されて、さっき出した結論を忘失しているの図。

*6:霧江による、縁寿戦力外通告

*7:ここで完全に死亡。EP4の縁寿周りでもやばかったけれど、更に上を行き、『うみねこのなく頃に』がぼくの中で「神」認定になりました。戦人カッコ良過ぎだろどうなってんだー……。